甲子園もベスト8をかけた戦いをしている夏の日のこと。
私は社会人2年目になり、2度目の夏休みを迎えた。

3年ぶりの行動制限がない夏休み。
これまで通りの夏休みであれば私は海外に行っているだろうか。

Instagramのストーリーにはそれぞれの夏が投稿されている。
私はというと、甲子園を見ながら「谷川岳 天気」とGoogleで検索を続けていた。

1人旅ができず悶々とした日々を3年ほど過ごしてきたが、
その中でも登山は胸が高鳴る瞬間の1つだった。

中でも谷川岳からの景色は、一度見てみたいと思っていた。

 

8月14日。
オードリーのANNをradikoで再生しながら、自宅の千葉から谷川岳まで2時間半ほど車を走らせた。
現地の空気は澄んでいて、朝6時の時点で気温が22度と夏を忘れさせる涼しさだった。

 

今回のルートは谷川岳ロープウェイ駅から天神平までロープウェイを使い、
そこから谷川岳山頂のトマの耳とオキの耳を目指すコースだ。
往復で約7㎞の道のり。

 

谷川岳の登山ルートはある程度整備されているものの、岩場を登る箇所が点在している。
そんな岩場を登りながら、霧に包まれた登山道を進んで行った。

 

そういえば今回登っているこの谷川岳は、遭難事故記録でギネス世界1位となっている。

遭難事故記録ギネス世界1位。

過去にネパールの山岳地で遭難しかけたあの日の事を思い出した。
最終的には現地の人が正規ルートへ案内してくれたが、
もし出会うことがなければ私はどうなっていただろうか。

 

過去の旅を思い返しながら、1時間半ほど歩いたところで霧が少し晴れてきた。

 

 

森林限界の中に現れた1つの岩場。
そこで繰り広げられる親子2人のやり取り。
登山の中にもそれぞれの物語があるから、私は山が好きなのかもしれない。

 

肩の小屋という山小屋を経由し更に登ること15分。
1つ目の目標値であるトマの耳へ到着した。

 

 

標高1963m。
一度は晴れた霧も再び姿を現し、あたりは霧に包まれた。

私が見たかった景色はトマの耳から見るオキの耳だ。
当然この霧では見ることはできないと半ば諦めていた。

 

 

 

霧に包まれたオキの耳に魅了され、待つこと10分。
目の前に広がる霧が晴れ、眼下には見たかった景色が広がっていた。

 

 

山の景色は一期一会。
快晴の時もあれば雨の日もあり、その時々に見せる表情が私を魅了していた。

 

トマの耳からオキの耳までは歩いて15分ほどだ。
オキの耳まで歩く最中に霧はすっかりと晴れ、遠くの山々まで見下ろすことができるほどの絶景が広がっていた。

 

 

霧がかかる山岳。
トマの耳からオキの耳まで歩く登山客。


雄大な景色を眺めながら、私はオキの耳へと登頂した。

 

 

標高1977m。
そこから見る景色に、私の心は更に高鳴った。

雄大な景色を眺めつつ、私はトマの耳を経由して肩の小屋へと向かい、
昼食をとることにした。

この日の昼食は銀座デリー監修のカップラーメンだ。

 

 

Instagramには旅行先の料理やBBQなどの写真が投稿されている。
これは決してひがみではないが、山頂で食べるご飯が何よりもおいしいことを私は知っている。

 

疲れた体に染み渡るラーメン。
この幸福感は何にも代えがたいのだ。

 

昼食を終え、私は下山を始めた。
片道3.5㎞の道のりを少しずつ下っていく。

 

 

「次はどこへ行こうか」
そう考えながらある行くこと1時間半。

私は天神平のロープウェイ乗り場まで無事に戻ることができた。

 

憧れだった谷川岳の景色。
天気にも恵まれ、夏の自然を全身で感じることができた。

 

いつかはアルプスに登りたい。
そう想いながらバックパックのサイドポケットに私は手を伸ばした。

 

あるはずのロープウェイの往復チケットがそこにはなかった。
まあこれも、夏の思い出だ。

 

 

To be continued…

 

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